欅坂46平手友梨奈センターシングル楽曲解説

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1月23日、欅坂46不動のセンター、平手友梨奈が「脱退」。

2016年のデビュー作「サイレントマジョリティー」から2019年の「黒い羊」までのシングル全曲でセンターを務めた。圧倒的なパフォーマンスと存在感、多少お騒せな言動が話題に。

平手脱退のニュース以降、ネットを飛び交う誹謗中傷の数々。「平手とその他バックダンサーのグループ」「暗くて反抗的な楽曲」・・・

違ーう。そんなものは欅の一部分でしかない。語るなら未来を。

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平手センターのシングル曲、公式chのМVを観ながら徹底解説。

16年4月「サイレントマジョリティー」8月「世界には愛しかない」11月「二人セゾン」と、「一緒に過ごした季節よ後悔はしてないか」を解説。

「サイレントマジョリティー」

МV冒頭、必死で自転車を立ち漕ぎする小林由依。すべてはここから始まった。

不穏なアコギストロークのイントロ。平手のダンスリハ風景。工事現場で待機するメンバー。当時14歳とは思えない眼力と低い声で歌い出す平手。意外とAメロ、Bメロはゆったりめ。全員無表情。少しづつダンスのフックが入り、張りつめた空気に少しづつ熱がこもっていく。

サビから一気にメロディの符割りが緻密さを増し、クラップ音が盛り上げを加速。平手が右腕を高々と上げメンバー陣の中心を闊歩する姿は十戒の海が割れる場面に倣い「モーセ」と呼ばれサイマジョパフォーマンスの代名詞になる。

センター平手の左にダンス巧者の鈴本美愉。右に歌唱力、ダンス共にオールラウンドプレイヤーの今泉佑唯。二列目中央には現キャプテンの菅井友香と副キャプテン守屋茜。万全の布陣で大人の世界に猛然と挑んだ驚異のデビューシングル。改めて聴くと地味な曲調だが秋元康の手による政治的ワードですら字余り気味にブチ込んだ歌詞の話題性も含め、当時のインパクトは凄かった。曲のラスト、不敵に微笑む平手。再生回数は既に一億回を突破。

「無表情のアイドル像」は平手の憧れである生駒里奈がセンターの乃木坂楽曲「制服のマネキン」を彷彿とさせる。なお生駒は某歌番組で山本彩、渡辺麻友を両隣に置きAKB坂道グループから選抜された並み居る強メンを従えセンターに立ちサイレントマジョリティーを披露。その日の時間帯のツイッターのトレンドを総なめする程の好評を呼び「イコマジョリティー」と呼ばれた。

平手と生駒は何度か対談の機会があり制服のマネキンポーズのツーショット写真を撮ったりして、グループ初期を担った者同士ウマが合っているようだった。先輩坂道グループとの仲も良好。スタートダッシュは大成功をおさめる。

「世界には愛しかない」

舞台は学校。静かなピアノの音を突然断ち切る平手渾身のシャウトでセカンドシングルは幕を開ける。しかし後の暗い世界観はまだこの頃は微塵もなく、夏の夕立のように激しく爽やかな高速アコギに乗せてポエトリーリーディング(詩の朗読)が始まるという破格の曲構成。秋元康がメンバーに直接読み方を指導したとの噂。朗読部分は聴く人によっては恥ずかしさを感じるかも。

しかしこの曲はバックトラックが本当に素晴らしいので詩が苦手な人は声よりも音の方に耳をフォーカスしてみて。Aメロの後、アコギに続いてエレキのカッティングが重なる快感。アイドル曲はとうとうここまで来た!

Aメロはまだ朗読の延長線上のような感じで淡々としたものだが、再び詩パートを挟んで曲展開はAメロ、Bメロ、サビの、オーソドックスな歌モノのフォーマットに。МVでは学校の教室から体育館へ移動、サビで景色は一変。いくつもの風力発電の風車が回転する広大な草原を走り、踊るメンバーをドローンが縦横無尽に撮影する様は圧巻。解放感。

このサビメロ、「世界には愛しかない」「信じるのはそれだけだ」と二つのメロディの掛け合いで始まり、「それが僕のアイデンティティー」で一つにまとまる凝りよう。スケールが大きく気持ちいい。カラオケでここだけを歌いたいファンは多いはず。ただ冒頭の叫び、詩の朗読に拒否反応を示す聴き手の壁は厚く、サイマジョに比べると再生回数は伸びなかった。

平手はこのセカンド時が一番幸せだったのかも。「てち」の愛称で呼ばれ、その笑顔は「キャロい」と皆に慕われ(可愛い(キャロライン)が語源)最年少メンバーとして愛されている感が伝わっていた。明るかった。

「二人セゾン」

日本のアイドル曲史上、いや、日本の大衆音楽史上に燦然と輝く問答無用の最高傑作。青春ポップスの金字塔。

褒め過ぎではない。これでもまだ抑えてるほうだ。2016年当時、こんな奇跡そのもののような楽曲にリアルタイムで出会え、それを聴けた喜びを自分は一生忘れないと思う。MVに至っては文句のつけようがない完璧さ。とにかく観て聴いて感じてくださいとしか言葉が出ないが(音楽はみんなそうだ)とりあえず順繰りで解説。長文覚悟、かかってこい!

ファーストシーン、街角で木漏れ日を見上げる平手。イントロなし。いきなりサビ。セゾンとはフランス語で季節。春夏で、恋をして、秋冬で、去っていく。

「一緒に過ごした季節よ後悔はしてないか」

秋元康の必殺フレーズ。欅坂46と一緒に過ごした1年間について、改めて聴き手に問いかけているかのよう。セゾンサビ、前半を音符5つごとに割り、後半で音を伸ばして盛り上げにかかる極上のメロディライン。この時点で既に耳は天国。はい終わり。もうこれでいいでしょ。全部書けるかな、この調子で。
軽やかに音がハネるAメロ。バレエのステップを取り入れたミュージカル調の振り付け。公園での太陽光による撮影が眩しい。制服姿のメンバー全員が眩しい。笑顔でスクールバッグを放り投げる。眩しい。

バレエ経験者の原田葵と佐藤詩織を最前列に置いたフォーメーションもこの曲が成功した要因のひとつ。振り付けに見事にハマり、存在感が際立つ。特に原田は曲中2度ある英詞パートの2度目で「1人カメラ目線どアップ」を披露し、平手以上の目立ちよう。平手はラジオでこの場面を可愛いと絶賛していた。何しろあの頃の原田はまるで小学生のようなルックス…と言うとプンプン怒るので扱いに困る厄介なお子ちゃまだった。

美メンも負けてはいられない。普通の楽曲ならサビメロに使われてもおかしくない程の贅沢な色彩感溢れるBメロ、「愛を拒否しないで」お嬢様育ち菅井友香とド田舎ヤンキー志田愛佳のツーショット。絶妙なバランス、キスしちゃいなよ、もう。(願望)

歌詞には物語性があり、季節や自然や他人に全く興味のなかった「僕」の前に突然現れた「君」が半ば強引に日常の輝きを見せる。「僕」は四季折々の光に導かれ、心の言葉を紡いでいく。光、光。光がこの曲の主役。世界は美しい。断言、結論。

あなたの周りで欅を「暗い」などと言う人がいたらこのMVを観せればいい。この歌を聴かせればいい。イメージがガラッと変わるはず。「暗さ」も「大人への反抗」もこの曲に限っては一切なし。光。ちなみにキーはかなり高め。カラオケは難しいぞ。

2度目のセゾンサビが終わる寸前、突然の転調。食い気味に怒涛のCメロが始まる。まだメロディあったのかよ。ここで遂に平手発動。長丁場のダンスに入るその一瞬、イケメン。カッコいい。カッコいいぞ、平手!

Cメロを境にMVは緻密なカット割りやスローモーションを多用。しつこいようだがとにかく光、光、めくるめく光。メンバーが弾ける。平手のシルエットが高く跳ぶ。青春の絶頂、躍動。更にまた別のメロディ。おいおい。この1曲を作るために一体何曲分のメロディ使ってるんだ?ギリギリの高音で歌われる美声。曲のテンションが一旦止まる。

時が止まる。ド、ド、ドッ。バスドラの鼓動。生きている!

そしてトドメ。この期に及んでまだやるか!セゾンサビ2連続の大サービス。ぬおお。平手を先頭にメンバー全員が堂々と行進しながら歌う。エレキのキュンキュンするフレーズが新たにサビに加わり胸を締めつける。メンバー、次々と手のひらを上空の光に向けて掲げ、欅の木を表現。その一方で、夕闇に染まった橋の上を平手が1人、最高にキャロい笑顔で駆ける、駆ける。なんて曲、なんてMV。凄すぎ。

メンバー全員、アイドルに捧げた青春と情熱のすべてが詰まっている神曲。再生回数は及ばないものの、ファンのシングル人気投票でサイマジョを抜き1位を獲得。ここ数年の平手に納得いかないファンが「セゾンの頃のてちに戻ってほしい」と事あるごとに言うのもまあ頷ける。残念ながら、もう戻れないのだが。

僕もセゾン。

「僕」が自分も「君」と同じ、季節の一部だと最後に気がつくこの一節で曲は唐突に幕を閉じる。ノイズ一閃。メンバーが作った欅の木の中に平手もいる。まだメンバー間に格差は無かった。ラスト、すっかり陽の落ちた橋の上、息を切らしながらカメラを睨む平手。既に爽やかな笑顔は消え、何か恐ろしいものに出会った驚きのような表情をしている。一足先に次の曲を聴いてしまったのか。翌年の「魔曲」不協和音である。

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